🌱 この記事ではnoteに投稿したエッセイ
『「株はただの数字じゃない」──おじいさんが僕にくれた投資の視点』をもとに、初心者が株を選ぶときの考え方について説明しています。
よろしければ、まずはこちらからお読みいただけるとより理解が深まります。
はじめに〜株を始めたばかりの悩み
「株って、どうやって選んだらいいんだろう?」
多くの投資初心者が最初に直面する壁です。
証券口座を開き、アプリに並ぶ銘柄と数字を見ても、何を基準に選べばよいのか分からない…。
この記事では、ストーリー仕立てで描いた「おじいさんと青年ハヤトの投資対話」をベースに、投資初心者でも理解できる株式分析の手順を体系的に解説します。
題材は、多くの人に馴染み深い 任天堂です。
実際の最新データを使って、「数字の裏にある物語」を読み解く練習をしていきましょう。
ステップ1 投資を始める前に「自分自身」を分析する
株式投資で最初に分析すべきは「企業」ではなく「自分自身」。
投資目的やリスク許容度を整理することで、迷わず銘柄を選べるようになります。
自分を知らずに投資を始める危険性
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目的が曖昧
→ 短期の値動きに振り回される -
リスク許容度を把握していない
→ 暴落時に狼狽売り
自己分析の3つの質問
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投資の目的は?(老後資金、資産形成、住宅購入など)
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投資期間は?(5年?10年?長ければリスク許容度も高まる)
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リスクに耐えられるか?(株価が30%下がったらどう行動する?)
👉 この自己分析が、銘柄を選ぶ際の「羅針盤」になります。
ステップ2 株式分析の基本は2種類ある
株の分析方法は大きく「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」に分かれます。
それぞれの特徴と初心者が学ぶべき優先順位を整理します。
ファンダメンタルズ分析(企業の本質を調べる)
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財務諸表や事業内容を分析
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「この会社は長期的に成長できるか?」を判断
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長期投資向き
テクニカル分析(株価の動きを調べる)
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株価チャートや出来高を分析
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「いつ買うか・いつ売るか」を判断
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短期トレード向き
👉 初心者はまず ファンダメンタルズ分析を学びましょう。企業の“根っこ”を理解することが投資の基礎です。
ステップ3 任天堂の最新データで学ぶ企業分析の実践
実際の企業データを使って、初心者でも簡単に企業分析ができる
「5ステップ診断」を解説します。
1. 通期業績で全体像を把握
企業の健康診断の第一歩は、通期決算を見ること。
任天堂のFY25(2025年3月期)はこうでした。
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売上高:1兆1,649億円(前年比-30.3%)
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営業利益:2,825億円(-46.6%)
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最終利益:2,788億円(-43.2%)
👉 Switch(初代)のライフサイクル終盤が原因。
「なぜ数字が悪化したのか」を理解することが重要です。
2. 四半期業績でトレンドを確認
次に直近の四半期決算を見ます。FY26/Q1(2025年4–6月)は、
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売上高:5,723億円(前年同期比+132.1%)
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営業利益:569億円(+4.4%)
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最終利益:960億円(+18.6%)
👉 Switch 2発売(2025年6月)で一気に回復。
通期と四半期をセットで見ると、業績の「転換点」が分かります。
3. ROE(自己資本利益率)で効率を測る
ROEは「株主資本を使ってどれだけ効率よく利益を出したか」を示す指標。
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任天堂のFY25 ROE:10.47%
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一般的な目安:10%以上で良好、15%以上で優良
👉 プロダクト切替期でも二桁を維持。安定した資本効率の証拠です。
4. PBR(株価純資産倍率)で評価の厚みを見る
PBRは「帳簿上の資産」に対して市場がどれだけプレミアムを乗せているかを示す指標。
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任天堂のPBR:約5.9〜6.6倍
👉 「1倍以下=割安」という単純な見方は危険。
任天堂は「マリオ」「ゼルダ」「ポケモン」といった強力なIP(知的財産)が市場に評価されているため、PBRが高くても妥当と考えられます。
5. 貸借対照表で守備力を確認
企業のリスク耐性は、貸借対照表で確認できます。
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自己資本比率:約80%
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現金同等物:1.4兆円
👉 借金に依存しない超健全財務。世界的に見てもトップクラスの守備力です。
ステップ4 初心者が陥りやすい落とし穴
企業分析をしても、初心者がよくハマる失敗があります。
その典型例と回避方法を解説します。
典型的な失敗例
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単一の指標に頼る
「PERが低いから割安!」と短絡する -
流行に乗るだけ
「みんなが買ってるから安心」と思う -
生活資金で投資する
下落時に売らざるを得なくなる
👉 大事なのは「複数の指標」と「背景の物語」を合わせて見ることです。
まとめ おじいさん式「5ステップ診断」
投資初心者はまずこの順番で企業を見ると迷いません。
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通期決算:業績の全体像を確認
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四半期決算:直近の変化・トレンドを把握
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ROE:資本効率を確認(10%以上目安)
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PBR:市場評価と“堀”を理解
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貸借対照表:守備力(現金と自己資本)を確認
👉 この流れを繰り返すことで、「数字の裏にある物語」が見えてきます。
おわりに〜数字の先にある“物語”を読む
株式投資は「数字のゲーム」ではなく、企業と共に未来を歩む行為です。
任天堂の例では、
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FY25は「世代交代前の静けさ」
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FY26/Q1は「新章の序曲」
という物語が数字に現れていました。
投資初心者の方も、ぜひ身近な企業の数字を覗いてみてください。
数字の奥に、きっとその会社の未来が見えてくるはずです!