──『超基本』から『幻想』まで、5冊が教えてくれる「投資の成熟」
「お金の勉強をしているはずなのに、なぜか不安が減らない」
そんなふうに感じたことはありませんか?
NISA口座を開設し、インデックスファンドを積み立てて、分散投資の大切さも理解した。
知識は少しずつ増えているのに、心の奥にはいつも小さな不安が残っている──。

2025年の秋。
書店の投資コーナーにはある変化が起きていました。
並んでいたのは単なる「お金を増やす本」ではなく、「お金と生き方を問い直す本」たち。
この10月から11月にかけて発売された新刊を見ていると、投資家たちの関心が「稼ぐ技術」から「生きる哲学」へと静かにシフトしているように感じます。
今回はその変化を踏まえて、お勧めしたい5冊をご紹介します。
まずは「地図」を手に入れる
『今さら聞けない投資の超基本 改訂新版』
著者: 泉美智子
出版社: 朝日新聞出版
発売日: 2025年10月7日
累計170万部という数字が物語るように、この本は多くの人にとって“投資の入口”です。
今回の改訂版で注目すべきは、2025年の“いま”に寄り添ったアップデート。
オルカン(全世界株式)やポイント投資といった、まさに今日のNISA投資家が直面しているテーマを丁寧に解説しています。
でも、この本の本当の価値は別のところにあります。それは──「なぜ投資をするのか」という問いに真っすぐ向き合っていること。
単なるテクニックの羅列ではなく、社会の一員としてお金と関わる意味を考えさせてくれる。
この視点があるからこそ、初心者は「自分の選択は間違っていない」という自信を得られるんです。
「NISA、始めてみたけど…この選択で本当に合ってるのかな?」
そんな迷いを感じたときにこの本を開けば、霧が少し晴れるはずです。
不安の正体に、光を当てる
『お金の不安という幻想』
著者: 田内学
出版社: ダイヤモンド社
発売日: 2025年10月7日
もしあなたが投資を始めて2〜3年が経ち、「資産は増えているのに、なぜか安心できない」と感じているなら──この本はまさに“次のステップ”になるでしょう。
著者の田内学さんは、元ゴールドマン・サックスのトレーダー。
でも本書はトレード技術の本ではありません。むしろ、「お金にとらわれすぎる生き方から、どう自由になるか」を問う哲学書です。
印象的な一節があります。
「不安は、お金では消えない。」
少し耳が痛い言葉ですが、深く刺さります。
私たちは「もう少し資産が増えれば安心できる」と信じて投資を続けますが、実際には社会との繋がりや人間関係が薄れるほど、不安は増していく。
田内さんが提唱するのは、金融資本だけでなく、「人的資本」──人との信頼関係や働くことの意味に目を向けること。
金融リテラシーも大切ですが、それ以上に必要なのは「人生リテラシー」なのかもしれません。
この本を読み終えたとき、あなたの投資観はきっと一段深くなっているはずです。

「予測できない」を受け入れる強さ
『謙虚なるコントラリアン投資家』
著者: ダニエル・ラスムッセン
翻訳: 長岡半太郎・藤原玄
出版社: パンローリング
発売日: 2025年10月13日
この本は、正直に言えば“上級者向け”。
でも、投資を真剣に続けてきた人ほど、ページをめくるたびに深く頷くことになるでしょう。
「投資で最も危険なのは、自分の考えを過信することだ。」
ラスムッセン氏が繰り返し説くのは、未来を“予測”するのではなく、“準備”する姿勢の重要性。
マーケットのノイズに振り回されず、淡々と積み上げていく──その土台にあるのが「謙虚さ」です。

SNSのタイムラインが「次はこれが爆上げ!」と賑わう中、冷静さを保つのは簡単ではありません。
でも、長期投資において本当に必要なのは、派手な予測ではなく地味な一貫性。この本は、そんな時代にこそ必要な“心のバランスを整える一冊”です。
投資を続けていると、自信が慢心に変わる瞬間があります。
そのとき、この本はそっと「謙虚であれ」と語りかけてくれるでしょう。
知識を「実践」に変える
『MONOQLO特別編集 長期株式投資』
出版社: 晋遊舎
発売日: 2025年10月28日
価格: 880円
一方で、「理論は分かった。じゃあ実際に何をすればいいの?」──そう思ったときに頼りになるのがこのムック本です。
配当株を中心とした“長く続ける投資”のための実用ガイド。
880円という価格も手に取りやすく、具体的な銘柄選びのヒントが欲しい個人投資家にぴったり。
家族で将来設計を話し合うときにも役立ちます。
教育費や老後資金を「配当金」で少しずつ賄っていく──そんな穏やかな資産形成のスタイルをこの一冊が教えてくれます。
哲学的な本を読んだあと、ふと「今日から使える知識」が恋しくなるとき。
その隙間を埋めてくれる、実用的なパートナーです。
「いま」の空気(トレンド)を映す鏡
『ダイヤモンドZAi 2025年12月号』
出版社: ダイヤモンド社
発売日: 2025年10月21日
最後に紹介したいのは、お馴染みの月刊誌です。
『ダイヤモンドZAi』は、まさに“市場の空気”を映す鏡のような存在です。
今号の特集は「10倍株の見つけ方」「NISA年末戦略」など、投資家の関心ど真ん中のテーマばかり。
この雑誌の魅力は、リアルタイムで投資家の心理と市場の動きを掴めること。
ニュースだけでは伝わらない「市場の温度」を、紙面を通じて感じられます。
書籍が“深さ”を提供するなら、雑誌は“速さ”を提供してくれる。両方を行き来することで、投資の視野は格段に広がります。
さいごに 〜「稼ぐ」と「生きる」のあいだで
2025年秋の投資書籍市場を眺めると、ひとつの構造が見えてきます。
片方には『超基本』のような入門書。もう片方には『コントラリアン』のような専門書。
そして、その真ん中にあるのが『お金の不安という幻想』のような──「生き方としての投資」を考える作品です。
この構造は、私たち投資家自身の“成熟のプロセス”そのものです。
知識だけを増やしても不安は消えません。
けれど、不安の正体を知り、自分なりの軸を持てば行動は少しずつ変わっていく。
投資とは、未来を当てるゲームではなく、「自分と向き合う旅」なのだと。
2025年の金融書籍たちは、そんなメッセージを静かに、でもしっかりと伝えてくれています。