🌱 ここでは、2025年相場を動かす関税・米国利下げ・日銀政策を解説しています。
数字の裏側にある“人の心理”については、以下のnoteでも説明していますので、是非ご覧ください。
はじめに〜2025年9月相場の解体-アノマリーは依然として有効か?
株式市場には「9月は弱い」というアノマリーが存在します。米国株の長期統計でも9月は最もパフォーマンスが悪く、日本株もその影響を受けやすいとされてきました。
しかし、2025年9月は単なる経験則では片づけられません。
米国による対日関税、減速感を強める米国経済、そして日米の金融政策という三つの大きなテーマが重なり合い、従来のアノマリーを上書きする局面となっているからです。
投資家にとっては、過去の経験に頼るよりも現在のファンダメンタルズを丁寧に読み解く必要があります。
マクロ経済の背景〜二つの経済圏の状況について
2025年9月を迎えるにあたり、米国と日本の経済はまったく異なる方向を向いています。
金融緩和を目前にする米国経済
米国経済は一見堅調に見えますが、実態は減速傾向が鮮明です。
第2四半期の実質GDPは年率3%と見栄えは良いものの、その多くは輸入急減といった一時的要因に支えられました。国内需要を示す指標は1%程度にとどまっており、実力を反映していません。
労働市場も弱含んでいます。
非農業部門雇用者数の伸びは鈍化し、失業率は4.2%に上昇。家計は関税による物価上昇を見越して消費を抑える姿勢を強めています。
製造業指数は50を割り込み、景気後退の懸念が高まっています。
こうした状況から、FRBは金融緩和に動く可能性が高まっています。
ジャクソンホール会議でパウエル議長が「雇用の下方リスク」に触れたことで、9月16〜17日のFOMCでは利下げが有力視されています。
試される日本の国内レジリエンス
一方の日本は、インフレと外部環境の板挟みにあります。
企業物価は前年比+2.9%、全国CPIは+3.3%と高止まり。賃上げが進んではいるものの、消費を押し上げるには力不足との見方も出ています。
日銀は難しい舵取りを迫られています。利上げを選べばインフレ抑制にはつながるものの円高を招き、輸出企業にとって逆風となります。逆に緩和姿勢を取れば、世界的な金融緩和の流れと整合し、株価の支えとなる可能性があります。
9月18〜19日の日銀会合は、為替と株式市場の方向を左右する大きな分岐点となるでしょう。
企業部門の現状〜下方圧力に晒される2025年度業績見通し
関税が発動される以前から、日本企業の業績はすでに厳しさを増していました。
東京商工リサーチの調査によれば、2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、「横ばい」が29.4%で最多。利益面では「減益」を予想する企業が「増益」を上回っており、収益環境の悪化が鮮明になっています。
理由は明確です。
仕入れや燃料費の高騰を価格に転嫁できない、人件費の上昇を十分に反映できない、国内消費の停滞が続いている──こうした要素が重なり、特に鉄鋼や機械などの製造業は厳しい立場にあります。
そこへ関税が重なれば、企業収益への圧力はさらに強まるのは必至です。
市場の最大の懸念材料〜トランプ関税の多角的分析
2025年の日本株市場で最大の懸念は、やはり米国による対日関税です。
8月7日から、日本から米国への輸出に15%の関税が課されました。自動車は価格競争力が大きく損なわれ、鉄鋼・非鉄や一般機械も同様に厳しい状況に追い込まれています。
試算によれば、この関税によってTOPIXベースのEPSは年間で10%押し下げられる可能性があります。
ただし一方で、半導体製造装置やPC、スマートフォンといった戦略的に重要な製品は対象から外れました。米国がサプライチェーンの混乱を避けたい思惑が透けて見えます。
その結果、日本経済は「罰せられる旧来型輸出」と「守られるハイテク産業」に二分され、投資家も銘柄選択の基準を切り替える必要に迫られています。
複合的要因の交差点〜2025年9月相場の統合分析
9月の相場は、弱気要因と強気要因が同時に衝突する局面です。
弱気材料は、関税による企業業績の悪化、FRBの利下げに伴う円高リスク、そして米景気の減速。一方で強気材料は、FRBが利下げに踏み切ることで世界的に金融緩和期待が高まり、株式市場全体にリスクオンの風が吹く可能性です。
さらに、9月はイベントが集中しています。5日の米雇用統計、12日のメジャーSQ、16〜17日のFOMC、18〜19日の日銀会合。前半はこれらを控えた警戒感から神経質な動きになりやすいですが、イベントを通過した後半には、市場が新しい現実を織り込み、年末に向けたトレンドを形成する可能性があります。
主なイベント
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5日:米雇用統計
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12日:メジャーSQ
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16〜17日:FOMC
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18〜19日:日銀会合
おわりに〜9月相場の航海術-主要シナリオと戦略について
2025年9月の日本株市場は、「9月は下がる」という過去のアノマリーではなく、関税と金融政策というファンダメンタルズが相場を動かす月になりそうです。
投資家が意識すべきは三点。
第一に、貿易摩擦の影響を受けにくい内需関連銘柄を軸にすること。銀行、建設、不動産、小売などは相対的に安定した投資先となると思われます。
第二に、ハイテク分野では半導体製造装置など“関税回避ゾーン”を厳選すること。
第三に、自動車や鉄鋼など関税直撃セクターは、短期的には避ける姿勢が賢明です。
最も重要な指標はドル円相場です。
140円割れの円高に進めば、輸出企業の業績悪化が一気に顕在化します。また、中間決算での業績修正も見逃せないポイントです。
シナリオ別に見ると、ベースケースでは39,000〜42,000円、強気シナリオでは42,000〜44,000円、弱気シナリオでは37,000〜39,000円のレンジを想定できます。
| シナリオ | 主要ドライバー | 想定レンジ | 戦略 |
|---|---|---|---|
| ベース | FOMC-25bp、円高は緩やか、関税不確実性は現状維持 | 39,000–42,000 | 内需・ディフェンシブ軸+半導体装置の“選別買い” |
| ブル(強気) | -50bp+ハト派ガイダンス、関税で前向きヘッドライン、日銀も緩和的 | 42,000–44,000 | 成長株・輸出の短期ローテを機動的に |
| ベア(弱気) | 利下げ見送りorタカ派、急速な円高、関税ヘッドライン悪化 | 37,000–39,000 | エクスポージャー縮小、現金比率↑、ディフェンシブ集中 |
結論として、9月相場は「不確実性が最も高まり、そして解消される」移行期となります。
経験則ではなく、最新のデータとイベントをもとに柔軟に戦略を調整することが、投資家にとって最大の武器になるでしょう。