朝6時、玄関のドアを開けると、意外なほど穏やかな空気が流れ込んできた。
今日は中学3年生の娘の高校受験当日だ。
「あれ、思ったより寒くないね」
「うん、なんか今日は暖かい」
冬にしては珍しく暖かく、気持ちよく晴れた朝。
なんだか良い予感がする、そんな空気感の中を娘と二人で駅へ向かった。
「一緒に来てほしい」
実は、今日の付き添いは娘からのお願いだった。
最近は親と歩くことなんて少なくなっていた娘。
そんな彼女が、昨日の夜、ぽつりと言ったのだ。
「明日は会場まで一緒に来てほしい。一人はちょっと寂しいから」
その言葉が嬉しくて。僕は二つ返事で「もちろん」と答えた。
眠れなかった夜
電車に揺られている間、娘の横顔を見ると目の下にうっすらとクマができていた。
「昨日はあんまり眠れなかった」と苦笑いする娘。
これまでの努力、プレッシャー、期待と不安。
15歳の小さな体に、どれだけの想いを背負って今日を迎えたんだろう。
寝不足の顔を見て、余計な言葉をかけるのはやめようと思った。
ただ静かに寄り添おうと。
坂道での会話
目的の駅を降りると、受験会場の高校までは緩やかだけど長い坂道が続いている。
他の受験生たちの姿もちらほら見える中、私たちは並んでその坂道を歩き始めた。
すると、意外なことに、娘の口からはたくさんの言葉が溢れてきた。
寝不足で身体は重いはずなのに、色々な話題で会話が途切れることはなかった。
学校の友達のこと。これからの高校生活への期待。
将来どんな大人になりたいかという漠然とした夢。
そして、受験が終わった後の家族旅行のはなし。
不安を打ち消そうとしていたのかもしれない。でも、それ以上に、僕に聞いてほしかったのかも。
冬なのに暖かい空気の中、娘の声も弾んでいるように聞こえた。
受験会場に向かって緊張しそうなのに、とても穏やかで優しい時間だった。
「一人は寂しい」と言ってくれたけれど、僕の方こそ、この時間を求めていたのかもしれない。
晴れ渡った空
ふと空を見上げると、気持ちよく晴れ渡った青空が広がっている。
冬なのに暖かく、風もなく。
こんな穏やかな日に受験を迎えられたことが、なんだか娘への応援のように思えた。
これから始まる試験。
結果がどうなるかは誰にも分からない。
でも、寝不足でも懸命に前を向いて、こうして自分の足で、自分の言葉で歩んでいる娘なら、きっと大丈夫。
この坂道を二人で歩いた記憶は、合否の結果以上に、私たち親子にとって大切な「お守り」になる気がした。
背中を見送って
校門が近づき、いよいよ別れの時。
「じゃあ、行ってくる!」
そう言って振り返らずに校舎へと歩き出す娘の背中は、朝家を出た時よりも、そして「寂しい」と言った昨日よりも、ずっと大きく頼もしく思えた。
これから先、彼女の人生にはもっと急な坂道や厳しい風が吹く日があるかもしれない。
もう「ついて来て」と言われることもなくなるかもしれない。
でも、今日のこの穏やかな青空と、坂道で交わしたたくさんの会話を思い出せば、きっと大丈夫。
暖かい空気の中、さらに温かい気持ちを胸に残して、僕は来た道を一人で戻って行った…。
これが、今日あった、「受験会場に向かう娘との思い出」です。
今日は併願校の受験。本命はまだこれからです。
でも、この日の坂道での会話も娘の頼もしい背中も、きっとこれからの受験に向けた大切な一歩になったと思います。
娘が受験を終えて、晴れて高校生になったら、娘が行きたがっている家族旅行に行きたいと思っています。
今年、受験生を持つパパやママも同じような体験をしているのではないでしょうか。
また、お子さんや大切な人から言われてハッとした「弱音」や「お願い」はありますか?
大きな挑戦の日の朝、その時の空の色や会話の記憶。もしよかったら、コメント欄で教えてください。
娘の頑張りと、この冬の空に「スキ」ボタンを押していただけると、とても嬉しいです。