2024年4月。
あの日、貯金ゼロからの脱却を決意してがむしゃらに100万円を貯めてから、もう2年の月日が流れた。
私、美咲、32歳。都内の会社で事務職を続けながら、今は「貯める」の次のステップ、「育てる」ことにも挑戦している。
あの100万円は私の自信の源であり、未来への希望の証だった。
でも、ただ銀行口座に眠らせておくだけでいいのだろうか?
低金利の時代、インフレが進めばせっかく貯めたお金の価値は少しずつ目減りしてしまうかもしれない。
そんな漠然とした不安が次の行動へと私を突き動かした。それが「新NISA」を使った資産運用への挑戦だった。
正直、最初は怖かった。「投資」なんて自分には縁遠い世界だと思っていたから。
「損したらどうしよう」
「ギャンブルみたいなものでしょ?」
そんな先入観が頭をよぎる。
でも、あの100万円を貯めた時のようにまずは「知る」ことから始めようと決めた。
本を読み、ネットで調べ、信頼できそうなセミナーにも参加した。
新NISAの仕組み、つみたて投資枠と成長投資枠の違い、インデックスファンドや分散投資の重要性…。
知らない言葉ばかりだったけれど学べば学ぶほど「これはギャンブルじゃない。
未来への準備なんだ」という確信に変わっていった。
特に「長期・積立・分散」という基本原則はコツコツ努力型の私には合っている気がした。
ドキドキしながら証券口座を開設し、まずは少額からつみたて投資枠で全世界株式のインデックスファンドへの積立投資を開始。
成長投資枠では応援したい日本の企業の株も少しだけ買ってみた。
初めての「買い注文」ボタンを押す指は少し震えていたのを覚えている。
資産運用を始めてからの1年間はまさにジェットコースターのようだった。
スマホアプリで評価額が上がっているのを見ると単純に嬉しくて心が躍った。
でも世界的なニュースや経済指標の発表で株価が下がった時は、途端に不安に襲われる。
「やっぱり私には向いてなかったのかも…」
と弱気になった日もある。
そんな時、勉強したノートや目標を書いた手帳を見返して「大丈夫、これは長期戦なんだ」と自分に言い聞かせた。
短期的な値動きに一喜一憂せず淡々と積立を続けること。それが一番難しいけれど一番大切なことだと学んだ。
お金との向き合い方も確実に変わった。
以前は「使う」か「貯める」かの二択だったけれど「お金に働いてもらう」という新しい視点が加わった。
経済ニュースが他人事ではなくなり、世界情勢にも自然と関心が向くようになった。それは自分の視野が広がっていくような、不思議な感覚だった。
そして、この1年間で忘れられない出来事があった。
運用を始めて半年ほど経ち、少しずつ資産が増え始めているのを確認できた頃、地方に住む母の誕生日が近づいていた。
昔から私のことを心配し、特に一人暮らしの娘の将来を案じていた母。
100万円貯めた時も電話口で「頑張ったねぇ」と涙ぐんでいたのを思い出す。
「そうだ、今年は温泉旅行をプレゼントしよう」
思い切って少し奮発して、母が好きそうな静かな温泉宿を予約した。
運用で得た利益の一部、というよりは運用が順調に進んでいることから生まれた心の余裕が私にその決断をさせてくれたのだと思う。
久しぶりに二人きりで過ごす時間。
露天風呂に浸かりながら他愛ない話をする中で、母がぽつりと言った。
「美咲がね、こうやって自分の力で将来のことをちゃんと考えて前に進んでるのを見てると、お母さん、本当に安心するのよ。ありがとうね」
その言葉と湯気に潤んだ母の優しい笑顔を見た瞬間、胸がいっぱいになった。
涙が溢れて止まらなかった。
私が必死で節約し、勇気を出して資産運用を始めたのは、ただ自分のお金を増やしたいからだけじゃなかった。
こうして大切な人を安心させたい、喜ばせたい、そんな想いがあったからなんだと心の底から気づかされた。
お金はそれ自体が目的じゃない。
誰かの笑顔や自分の未来を豊かにするための大切なツールなんだ。
あの温泉宿での一晩は私にとって数字の増減よりもずっと価値のある、宝物のような時間になった。
資産運用を始めて1年。
私の資産は市場の波に乗りながらも着実に育ってくれている。
始めた頃の不安は今は静かな自信へと変わりつつある。
もちろん、これから先も市場がどうなるかは分からない。でも、一喜一憂せずに、長期的な視点でコツコツと続けていくこと。そしてお金を通して得られる経験や、人との繋がりの大切さを忘れないこと。それが今の私のスタイルだ。
新NISAは私にとって単なる投資制度じゃない。
未来への扉を開けてくれた大切なパートナーのような存在だ。
もし、以前の私のようにお金のこと、将来のことで一歩踏み出せずにいる人がいたら伝えたい。
「大丈夫。まずは知ることから始めてみて」
その小さな一歩がきっと想像以上の未来に繋がっていくはずだから。