積立投資をしていると、ふとこういう気持ちになることがありませんか。
「これ、出費にしていいのかな」と。
旅行の予約をするとき、子どもとテーマパークに行くとき、家族でコンサートに出かけるとき——ポートフォリオの含み損を思い浮かべながら、財布の紐をちょっとだけ固くしてしまう。
投資を始めてから「使うこと」に罪悪感を覚えるようになったという話はよく聞きます。僕も最初の数年は、外食するたびに「この3,000円を積立に回したら」と頭の片隅でそろばんを弾いていた時期がありました。
ただ最近、少し考え方が変わってきています。例えば、GWに家族で出かけた音楽フェスもその一つです。
この記事でわかること
- 「体験経済」という消費トレンドが、実際の経済規模でどれほど大きくなっているか
- 音楽フェスを例に、フリーミアムモデルが都市・街・企業にどう機能しているか
- 「増やすこと」と「使うこと」を両立させるための、パパママ投資家なりの考え方
20万人が集まる音楽フェスが教えてくれたこと
東京・丸の内で毎年GWに開催される「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」というクラシック音楽祭があります。
フランス発のイベントで、累計来場者数は923万人を超える世界最大級の規模感。2024年の東京開催では、GWの3日間だけで約20万人が集まりました。
「クラシック=敷居が高い」というイメージを持っている方も多いと思うんですが、実際に行くと全然そんな感じじゃないんですよね。
有料コンサートは1公演約45分で完結しているし、0歳から入れる「あかちゃん大歓迎」公演もあれば、3歳以上向けのキッズ・オーケストラ公演もある。
終演後に会場の外へ出れば、丸の内の街のあちこちで無料コンサートが繰り広げられていて、有料公演に出ていたアーティストがサプライズで弾いていたりする。
「これ、タダでいいの?」と毎年思ってしまいます。
フリーミアムを「都市スケール」でやるという発想
このイベント、ビジネスモデルとして見ると面白い構造をしています。
有料コンサートを軸にしながら、無料コンサートやキオスクコンサートで周辺エリアに人を回遊させる。街を歩く人が増えれば飲食も物販も動く。
東京国際フォーラムだけでなく、丸の内・有楽町・日比谷エリア全体が「フェスの会場」になる設計です。
これ、SaaSやアプリでよく語られる「フリーミアムモデル」を都市スケールでやっている感覚なんですよね。無料で入口を広げることで来場者数が増え、来場者が増えることで周辺の経済全体が潤う。
「タダだから価値がない」じゃなくて、「タダだから人が集まり、人が集まるから全体が回る」という逆算の発想です。
投資の文脈でいうと、配当を再投資することで次の配当を生む複利の構造に似ています。入口のコストを惜しまず、長期でリターンを刈り取る——という設計思想として読めるのが面白い。
ちなみに、フェス文化が地域経済に与えるインパクトは想像以上に大きくて、例えば千葉県内の大型フェスが生み出す経済波及効果は年間約1,000億円規模というデータもあります。それだけの経済的圧力があるからこそ、自治体が何百億円規模のスタジアム建て替えを議論できる。
「フェスを誘致するためにインフラを整備する」ではなく、「フェスが生み出す経済効果がインフラ投資を正当化する」という構造になっています。
保有株が楽しんでいたフェスを支えていた
そのフェスの協賛企業を眺めていたら、一社、目が止まりました。
INPEX——僕が株を保有している会社です。
エネルギー企業がクラシック音楽祭を支援する。一見ちぐはぐに見えて、ESGや文化芸術支援の文脈では非常に理にかなっている。
自社サイトでも「0歳の赤ちゃんからクラシック音楽ファンまで誰もが低料金で楽しめる」ことを協賛理由として挙げていました。
株主として「うまいな」と思いながら眺めるのは少し複雑な気持ちでもあったんですが(笑)、同時に不思議な感慨もありました。
自分が楽しんでいた時間を、自分が持っている株の会社が支えていた。
投資って「経済の血液が循環する仕組みへの参加」だと思っているんですけど、それをフェスの会場で音楽を聴きながら体感した瞬間でした。
「使うこと」への罪悪感はどこから来るのか
話を戻すと、冒頭の「これ、出費にしていいのかな」という感覚の話です。
資産形成を意識し始めると、支出を削ることが美徳みたいな感覚になりやすい。節約=正義、消費=悪、という図式が頭のなかに刷り込まれていく。
でも僕は最近、これはちょっと歪んだ見方だなと思うようになっています。
「増やすための投資」と「生きるための消費」は対立しているわけじゃない。むしろ、今この瞬間の豊かさにお金を使うことが、長期的な「なんのために増やしているのか」という軸を保つうえで必要なんじゃないかと。
インフレが続く時代に家計を守ることは重要です(関連:JR・食品・光熱費…値上げが止まらない2026年に家計を守る方法)。ただ、「守る」ことだけに意識が向きすぎると、「なんのために守っているのか」が見えなくなる瞬間があります。
2026年はJR・食品・光熱費・社会保険料と家計のあらゆる方向で値上げが続いています。何がどれだけ上がっているかデータで…
AI時代に「体験」の価値が上がる理由
今回のフェスのアンバサダーがこんなコメントをしていました。
「AI時代、やはり『触れ合う』が人間の最大のテーマ。音だってただの空気の波。その場に行かないと”触れ合えない”」
これ、妙に刺さったんですよね。
投資の情報収集は、今やAIである程度できる。市場分析も、ポートフォリオの管理も、自動化の余地がある。でも「生演奏の空気を浴びる」「子どもと同じ時間を体験する」「その場所でしか感じられない空気を吸う」ことは、どんなテクノロジーでも代替できない。
体験経済(エクスペリエンス・エコノミー)という概念は以前からありますが、AIが普及するにつれて「自動化できないもの」への需要はむしろ高まっていく気がしています。それが音楽フェスであれ、家族との旅行であれ、子どもの運動会であれ。
パパママ投資家が「使う」を設計する視点
投資をやっている親御さんに多いパターンとして、こういうことがあります。
将来のために積立を続けながら、子どもとの今の時間にはなかなかお金を使えない。「老後のため」「教育費のため」と頭でわかっていても、何かを体験するたびに「この費用、運用に回せたのでは」という計算が頭をよぎる。
僕も同じでした。ただ、8年間積み立ててきて今思うのは、「増やすこと」と「使うこと」は実は両立する、ということです。月ごとの積立設定を仕組み化してしまえば、そのお金は自動で動く。残りの可処分所得の中で、体験に投資するかどうかは別の話として設計できる。
どこから投資を始めればいいかわからなかった頃の自分へ、という話をしているこちらの記事も参考になるかもしれません。 → 投資を始めるとき、本当に知りたかったのは"次に何をするか"だった
投資歴8年・資産5,000万円の会社員が明かす「入金力ステージ別の投資ロードマップ」とは。月3万円から始めて、給料が上が…
積立は淡々と続ける。その上で、子どもと過ごす時間、家族での体験、自分が豊かだと感じる瞬間にもちゃんとお金を使う。「増やすためだけに生きているわけじゃない」という視点を持ち続けることが、長く続けるための土台になるんじゃないかと思っています。
まとめ〜数字の先にあるものを見失わないために
資産形成の目的を突き詰めると、「将来の自分が豊かに生きるため」になります。
だとしたら、「今この瞬間の豊かさ」にも投資する発想はあっていい。20万人が集まる音楽フェスの経済構造を眺めながら、改めてそう思いました。
積立は続ける。暴落でも動じない。でも、子どもと過ごせる時間や、家族と体験できる記憶にもちゃんとお金と時間を使う。
「増やすこと」と「使うこと」——この2つを対立させずに設計できると、投資の続け方もちょっと変わってくるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
このブログのタイトル「かぞくとあおぞら」に込めた想いや、投資で遠回りをしてきた僕の自己紹介を[こちら]にまとめています。
もしよろしければ、少しだけ覗いていただけると嬉しいです。


